「北海道５日間の旅（富良野）」

　私にとって「富良野」という土地は、必ずしも、近しい土地ではなかった。
ドラマ「北の国から」の舞台となったことで、舞台として登場する富良野の存
在を知った程度で、冬は雪で閉ざされる厳しい環境の土地という認識程度であ
った。

　ところが、同じ倉本　聰のドラマ「風のガーデン」の舞台になったというこ
とで、新しい認識が生まれた。ルイと岳が花の世話をする「風のガーデン」は
閉ざされる厳しい環境では無く、花の命の可能性を謳っているようである。因
みに、ドラマの中で、このガーデンは、訪問医をしながら冴子が遺したという
設定である。

　その富良野を見てみたい、この思いが、今回の北海道旅行の原点である。富
良野のありのままの姿を見てみたい。そこで、富良野の花のカレンダー見なが
ら、旅行日程を検討した。いろんな状況で、ラベンダーが咲く花の盛りの７月
に日程を組みことができなかったが、今から思えば、６月の日程が富良野の様
々な姿を見せてくれたようである。つまり、７月の花の盛りは、満開の花の感
動を得られるかもしれないが、それに至る花を育てる苦労は背景に隠れてしま
うかもしれない。

　私たちは、川崎の地で、ささやかながらも、空いている土地を使って、花を
育てている。道行く人は、それを見て「きれいですね」と声をかけてくれる。
そうした中に、私たちの生活と富良野の人々の生活をダブらして、花を通じた
命の可能性の会話を感じるのである。

　「風のガーデン」のロケ地は、新富良野プリンスホテルから送迎車で行く。
ロケ地は、このドラマのために２年がかりで造成されたもので、３６５種類の
花が季節の流れとともに咲き、癒しの風景が楽しめる。この５月から公開され
ており、連日、多くの人が見学に来ている。この６月は、やはり、花は少ない
が、今にも貞美やルイ、岳が現れそうである。そして、貞三役の緒方拳が。私
もそれを期待して、このロケ地を訪れた。

　このドラマで、「カンパニュラの恋」を歌う歌手平原綾香は、ドラマでは貞
美の愛人役でもある。彼女の愛人役には、いささか抵抗があるが、全身で歌う
彼女の歌は、訴えるものがある。恥ずかしながら、このドラマまで、平原綾香
という歌手は知らなかったが、彼女は、地元の洗足学園大学出身であり、私の
勤務先もその先であったので、いつか、街ですれ違っていたのかもしれない。

　「カンパニュラ」とは、どんな花なのと、我が家でも話題になったが、「ホ
タルブクロ」といえばなじみがある。「カンパニュラ」は、キキョウ科ホタル
ブクロ属の、主として地中海沿岸地方に原産する植物から改良された、観賞用
植物の総称だそうで、夏の高温多湿に弱く、東京より暖かい地方では栽培しに
くい。やはり、北海道の花なのである。

　富良野の名産に「ふらのワイン」がある。ワインに目の無い私たちは、ワイ
ン工場を見学し、その後、近くのワインハウスで昼食をすることにした。

　ぶどうヶ丘に並んだ赤い屋根。山の中腹に建つレンガづくりのワイン工場は
１９７６年にできたもので、その後、増築、樽熟成庫を建設し現在の姿になっ
ている。この工場では、ふらのワインの製造工程、地下の熟成庫でのこれまで
壜詰めした製品、樽熟成・タンク熟成の様子の見学、ワインの試飲などができ
る。ここで、ふらのワインを２瓶手に入れた。北海道旅行の余韻を我が家で楽
しめそうだ。

　ワイン工場のすぐ近く、富良野市街を一望できる丘の上にワインハウスはあ
り、広大な田園風景と十勝岳連峰のパノラマを眺めながら洋食を楽しめるレス
トランである。ふらのワインや地元産の牛肉、ふらのチーズを使い特製のパン
を容器にしたチーズフォンデュがおすすめの一品。昼食は、ここに決めて予約
しておいた。早速、チーズフォンデュを注文し、樽熟成のふらのワインで食卓
を彩った。樽熟成のワインは、樽の香りが芳醇で、パノラマの風景と共に、楽
しいひと時を過ごすことができた。特製のパンを容器にしたチーズフォンデュ
とは、面白い趣向で、朝早く、我が家を出発したことで空腹であったこともあ
り、その容器も食べてしまった。