２００２年７月１５日　　　　　　生田緑地のどんぐり山を守る会
　　　　　　　　　　　　　　　　　川崎市多摩区東生田３−１−４３
　　　　　　　　　　　　　　　　　事務局（DEN設計工房内）酒井  行夫


　�T　前例のない生田緑地内の開発造成工事は中止され、
　　　　　　　　　　　　　　　どんぐり山が守られました。

　市民のみなさん、また地元のおし沼自治会をはじめ、私たちを力強く応援し
てくださったすべてのみなさん。心からの感謝とともに、うれしいニュースを
ご報告いたします。

　生田緑地の「どんぐり山」（多摩区東生田２丁目4698）が守られました。

　今年４月、川崎市は、全国に例を見ない都市計画緑地（公園予定地）内の開
発造成工事を許可し、工事が始まりました。これによって市民の宝である生田
緑地は分断され、開発の大波にさらされようとしていました。

　これを憂えた市民有志は「どんぐり山を守る会」を結成し、工事の中止と、
この地を市が買収することを求めてきました。市は、ここが生田緑地の保全に
とって重要な土地であることを認め、買収の交渉に入り、事業者も工事を中止
しました。

　途中、市による買収交渉打切りの危機もありましたが、私たちは多くの人た
ちにはげまされてがんばり、ついに買収が決まったのです。

　ここは、生田緑地の中央地区と、向ヶ丘遊園跡地をふくむ東地区とを結ぶ尾
根道のカナメの地点に当り、絶好の見晴し場所です。「野鳥の森」から、ここ
を通って美しい雑木林を抜け、旧遊園の「ばら苑」に達する遊歩道も実現可能
になりました。生田緑地を真の市民の大公園にしていく上で、私たちも大事な
役割を果たせたことを幸せに思います。


　�U　差額の1,500万円を、市民が負担する決意をしました。

　今度の川崎市と事業者との間の買収交渉は、1,500万円の差額をめぐって決
裂しようとしていました。どちらの主張にも理由があるのでしょう。

　しかし、はっきりしていたことは、この差額が何らかの形で埋まらないかぎ
り、買収交渉は打ち切られ、いったん止まっていた造成工事が再開されてしま
うということです。それは、この場所だけに止まらず、生田緑地が開発の危機
にさらされ、向ヶ丘遊園跡地の緑の保全にも暗い影がさすことを意味していま
した。

　私たちはぎりぎりまで話し合った結果、「市民の手でこのお金を用意するし
かない」と決断しました。そして最後に、緊急に借り入れた1,500万円を「緑
地保全協力金」として事業者に支払いました。これ以外にどんぐり山は守る手
だてはなかったことも、合わせてご報告しなければなりません。


　�V　川崎市民一人あたりの公園緑化予算は全国最下位という現状の中で

　私たちは、「都市計画緑地内の緑を守れ」といういわば当然の主張をしただ
けなのに、大きな困難と痛みが伴いました。また市の緑政担当者の人たちの苦
しみもまざまざと見てきました。

　緑地を買収できない理由として必ずいわれるのは、「財政難」です。しかし
いま「財政豊かな」都市があるでしょうか。

　川崎市が発表した「緑の３０プラン」にもとづく「公園・緑地拡大」の10年
計画（平成７〜１７年）の５年目の達成率は、本来なら５０％であるべきとこ
ろ。わずか０．５％に止まっています。川崎市民一人当り公園・緑化予算は、
全国の政令１２都市の中で最下位です。そして、市民の願いに反して、貴重な
緑が次々とこわされているのが、残念ながら川崎の現状です。

　しかし、私たちの運動の目的は行政の非をならすことではありません。いま
開発を許せば永久に失われてしまう、かけがえのない緑を、市民の決意で守る
ことなのです。


　�W　「生田緑地・どんぐり山みどり基金（トラスト）」に市民のご協力を

　川崎の緑と自然環境を、何とかして守りたいと思う市民はたくさんおられま
す。
　　　　　　　　　　　　　　　　
　私利私欲を離れてお金を出し合い、自然を守ろうとする多くの人たちがいま
す。それは「ナショナルトラスト」と呼ばれ、世界各地で環境問題への与論を
高めてきました。「知床原生林」や「トトロの森」がこうして守られたことは
よく知られています。

　いま川崎市が、市民の財産である生田緑地を十分に守り得ないならば、市民
自らが緑の共有財産を守るために立ち上がることは、トラストと同じ精神と信
じます。

　私たちは「生田緑地・どんぐり山トラスト基金」をつくり、一人でも多くの
みなさんに募金を呼びかける活動を始めたいと思います。
　　
　そして私たちは、これからの川崎市政において、環境問題が本当に重視され
公園緑地が拡がり、大気汚染対策が強められていくことを望みます。

市民のみなさんの、ご支援を心からお願いいたします。

仮の歩道も確保され、現況復帰と道路整備を待つばかりの「どんぐり山」(7/20)

どんぐり山の地図

生田緑地のどんぐり山が守られるまで（経過報告）