美しい西湖のある都　「杭州」

　六和塔は、杭州の南東を流れる銭塘江の北岸の月輪山にそびえている。北宋
時代、呉越王が銭塘江の氾濫を鎮めるために建造したという。現存する塔は、
塔身が南宋時代のもので、外のひさしは、１９００年の再建である。外観は１
３層だが、実際は７層８角形の塔で、高さは、約６０メートルある。階段を最
上階まで上がると、銭塘江の流れが一望できる。
　入場料は２５元であるが、塔に上るためには、更に１０元必要である。パッ
ク旅行には、入場料のみしか入っていないが、意を決して、汗だくで、最上階
まで上って銭塘江を眺めた。
　銭塘江は、こことアマゾン川しか見ることができない逆流の奇観を見ること
ができる。満潮時、広い河口で潮位が上がった水が、狭い上流に逆流するのだ
そうだ。残念ながら、８月は１３〜１５日でしか見ることはできない。

６０メートルの六和塔を汗だくで上った。

　霊隠寺は、北高峰山麓の古刹である。中国の禅宗十大寺院のひとつで、東晋
時代に建立されたと伝えられる。五代呉越国の時代には、僧３千人を擁する大
寺院であった。大雄宝殿には、釈迦如来やイルカに乗った観音像が安置されて
いる。境内は深い木立の中を谷川が流れ、対岸の飛来峰には１０〜１４世紀の
石仏が残っている。
　中国の寺院は、多くがひさしが跳ね上がっている。しかし、この霊隠寺は、
日本の寺院と似た外見である。また、安置されている釈迦如来やイルカは、金
色で派手である。僧も黄色の袈裟を着てお勤めをしている。同じ仏教でも大分
違うようだ。ここの大雄宝殿は、奈良の東大寺で言えば、大仏殿に相当するの
であろう。信心深い参拝者が、日本では考えられない大きな線香に火をつけて
お参りをしている。釈迦如来や観音像の前には、黄色いマットが敷かれていて
それに膝まずいて参拝するのも、中国の特徴である。

釈迦如来や観音像が安置されている大雄宝殿


１０〜１４世紀に掘られた石仏とその背後の洞窟

　杭州名物といえば龍井茶で、中国緑茶の中でも最高級とされている。かって
は、皇帝しか飲むことが許されなかったという。ここ龍井村の中国茶葉博物館
は、お茶の歴史や茶道具を展示している。ここでは、お茶の試飲をさしてくれ
る。緑茶、烏龍茶、ジャスミン茶、一葉茶をそれぞれの特徴を説明しながら、
試飲するのである。一葉茶は、漢方であり、少し苦いが、健康にいいというの
で、買ってしまった。
　因みに、茶館でのティータイムにも案内してもらったが、お茶を飲むという
よりも、お茶を飲みながら食事をするという感じで、バイキング的な料理をお
茶を飲みながら楽しむ。ほとんど食事をする感じで、これには驚いた。中国の
人々は、食事をするときには、大量の中華料理をお茶を飲みながらいただく。
私など、暑い中で、お茶では我慢できないので、ついつい、ビールを注文して
しまう。ただ、このビールも現地のものは、２度から３度のアルコール度数で
少し、気が抜けたようなものであるが、暑いときには、それでもありがたい。

龍井村の中国茶葉博物館でのお茶の試飲

　杭州は、中国八大料理に数えられる美食の地である。西湖湖畔の杭州一の老
舗「楼外楼」は、外国の賓客も多く訪れる。ここで、豚の角煮の東波肉（とん
ばにく）、鶏を蒸し焼きした叫化鶏（こじきどり）などの杭州名物料理を食べ
る。中国の料理は、食べきれないほど量が多い。中国では、料理が足らなくな
るのは失礼であると、量を多く料理を出すそうだ。
　ここで、暑さで喉が渇いたので、コップいっぱいのビールのサービスドリン
クに、更に追加して、ビールを注文した。ウエイトレスは、ここのビールは、
アルコール度数が２度から３度程度で、お口に合うかどうかと心配して、すぐ
には、持って来なかったが、ガイドさんにお願いして、瓶で持ってきてもらっ
た。確かに、少し気が抜けたようなビールだが、乾いた喉には、ありがたかっ
た。
　夕食後、骨董やお土産物の並ぶ夜市「呉山路古玩市場（こざんろこがん）」
に案内される。言ってみれば、お祭りの夜店風である。翌日の夕方は、河坊街
の漢方やお土産物、雑貨の店が軒を並べている歩行者天国を散策する。水晶玉
を内部から絵を描く、クリスタル・インサイド・ペインティングのお店が気に
入って、あまり大きなものではないが、作品を記念に買ってしまった。